森林の樹木は、光合成によって大気中の二酸化炭素を吸収して成長します。光合成で吸収した二酸化炭素は、炭素として樹木に取り込まれ、やがて幹や葉などに貯蔵されます。
樹木を伐採しても、木材として住宅や家具等に利用すれば、炭素は貯蔵されたままとなります。
このため、木材の利用を進めることは、「都市等における第二の森林づくり」につながり、地球温暖化防止への貢献が期待されます。
木材は燃やした時や微生物に分解される時、炭素が酸素と結びつき、二酸化炭素となって大気に放出されますが、木材利用を進めることで、樹木と大気の間で炭素の循環が繰り返されるため、長期的に見ると、炭素の収支はゼロとなる「カーボンニュートラル」に貢献します。
さらに、木材は鉄やコンクリート等の資材に比べて製造や加工に必要となるエネルギーも少ないため、地球にやさしい資源と言えます。
木材を使うことで、木を伐る・製材する・建築するといった過程が生まれます。
県産材を使うと、各過程においてマンパワーや施設整備が必要になるため、新潟県内の仕事を生み出すことに繋がります。
木材は縦方向の圧縮に強く、横方向の圧縮に弱いという特徴があります。
また、コンクリートや鉄に比べて軽いわりに強いと言われています。
木材は1本の木から品質の異なる丸太が生産されます。
また、品質に合わせて異なる用途に使用されます。
伐採後の木は水分を含んでいるため、建築用材として利用する際はしっかりと乾燥させる必要があります。
乾燥していない木材は収縮率の異方性※により狂いが生じて、接合部の隙間や柱の割れの原因となります。
木材は乾燥させることで、強度が増し、接着性も向上します。
木材を風通しよく積み上げ、
自然に乾燥させる
乾燥機で温度や湿度を調整し、
所定の含水量まで乾燥させる
木材は、接線方向(板目)、半径方向(柾目)の順に大きく収縮し、繊維方向(木口)にはほとんど収縮しません。
このことを「収縮率の異方性」といいます。
建築物の内装に無垢材などの木材を用いると、木の吸放湿作用によって室内の湿度をある程度一定に保つことができます。
木材は熱の伝わる速度が遅いため断熱性があります。床材として使用すると、他の材料よりも足の冷えを防ぐことができます。
木材には弾性という性質があり、衝撃が加わると組織がつぶれたりたわみが生じます。この性質により、衝撃を和らげることができます。
活性炭に消臭効果があるのは一般的によく知られていますが、木材チップや枝葉も同様に消臭効果を持っています。
スギから調製された精油や抽出物には抗菌効果が見られます。また、二酸化窒素等の大気汚染物質を除去する効果があります。
『フィトンチッド』という樹木から発散される匂い成分は、血圧を低下させるなど体をリラックスさせる作用があります。
資料
科学的データによる木材・木造建築物のQ&A 木材木造建築物はどのような効果をもたらしますか?/林野庁
新潟県は県土の総面積(126万ha)のうち68%(86万ha)が森林で、全国で6番目に広い森林面積となっています。針葉樹はスギを主としてマツ類、広葉樹はブナやナラを主体とした多様な樹種で構成されています。
出典:新潟県の森林・林業2023年
県内の民有林の森林蓄積は人工林※を中心に充実し、令和4年3月末現在で約1.1億㎥となっています。
また人工林はその7割が一般的な利用期となる45年生以上に達しています。
※人工林は植栽や間伐など、人の手によって管理されている森林です。
県内民有林人工林の林齢別蓄積
(令和4年3月31日現在)
資料:令和4年度 新潟県の農林水産業(資料編:森林・林業)/新潟県
新潟県は、付加価値の高い持続可能な農林水産業の実現、森林資源の利用促進による林業の振興を図っています。
製材用、合板用、木質バイオマス発電用など木材の多様な需要に応えるとともに、森林資源の循環利用の促進に向けて、素材生産の拡大に取り組んでいます。
※素材生産とは
森林の立木を伐採し、丸太を生産する工程のことです。
新潟県総合計画における達成目標(成果指標)
指標名 | 現状値 (2017年) |
中間目標 (2020年) |
最終目標 (2024年) |
---|---|---|---|
素材 生産量 |
16.2万㎥/年 | 20万㎥/年 | 25万㎥/年 |
新潟県の素材生産量の推移
※「バイオマス等」は木質バイオマス・ペレット・おが粉の合計値で、県が独自集計・加算したもの(H27~)です。
資料:農林水産省「木材統計」及び林政課調査
新潟県や県内市町村では、県産材利用に関する基本方針を定めており、
県施設や市町村施設において積極的に県産材を使用しています。
単位:㎥、件
年度 | H30 | R1 | R2 | R3 | R4 |
---|---|---|---|---|---|
県施設 (件数) |
559 (27)※ |
127 (12) |
286 (17) |
100 (18) |
110 (14) |
市町村施設 (件数) |
1,498 (31)※ |
192 (23) |
474 (24) |
621 (27)※ |
264 (24) |
計 (件数) |
2,057 (58) |
319 (35) |
760 (41) |
721 (45) |
374 (38) |
※H30及びR3は大規模木造施設において県産材が利用されたことから、例年と比べ利用量が多い。
(H30:新潟県少年自然の家371㎥、村上市スケートパーク931㎥、R3:五泉市交流拠点複合施設 250㎥など)
資料:林政課調査
老朽化が進んだ2保育園と1幼稚園を統合し、幼保連携型認定こども園を新設しました。木造平屋建てとし、新潟県産スギ材を主体とする地域材を構造材及び仕上げ材に利用して、子どもにやさしい木のぬくもりの溢れた園舎になっています。
高等学校の格技場であること、海岸に近く塩害を考慮しなければならないという立地条件から、耐久性、都市景観、環境問題を考慮し外壁に県産材を使用しました。
地域の環境に調和した温もりが感じられる施設となっています。
高齢化が進む加茂・田上地域にて、「地域密着型病院」のモデルを目指し改築された病院です。
「北越の小京都」と呼ばれる加茂市の地域性を生かし、多目的ホールや展望ラウンジの内装に県産材や漆喰塗を採用し、風土に馴染んだ温かみのある空間を演出しています。
「スケートボードの聖地・むらかみ」を目指して整備されたスケートボード施設で、通年型屋内施設として国内最大規模を誇ります。
村上市の主要産業である林業をPRする建築とするため、柱、梁、トラスなどの構造材や内装材に市産材をふんだんに使用しています。
生涯学習の推進、観光と連動した産業振興の機能を併せ持った複合施設です。開放感あふれる空間で木材をふんだんに使用しており、その多くに五泉市産材を使用しています。
木のぬくもりを感じながら、買い物や遊びができる施設です。特に、立体的なネット遊具や木材に触れながら遊べる子どもの遊び場は大人気です。